Twitter / unepist

小柳粒男 『くうそうノンフィク日和』

エレGYについて書いたので,同じ流れでパンドラに掲載された『くうそうノンフィク日和』についても感想を.こちらも同じく第一回流水大賞の優秀賞作品.優秀賞ってのは大賞ではないけれど,応募作品の中でもとくに出来がよくて評価に値する作品に贈られる賞です.
作品としての評価は高いけれど,「発表されることによって,今までの文学の流れを大きく変える」という流水大賞の審査基準には達しなかったということですね.

この『くうそうノンフィク日和』は個人的な感想としては,まだまだ文体も荒いし,大絶賛とまではいかないのですが・・・「うん,面白かったかな.次も読んでみようかな」と思えるような部分がたくさんあります.
ちなみに,その後に発表された続編の『シャカイに降り立つおかっぱ頭』と『シノキ大戦』では,それなりに文章も収まりが良くなって,キャラ立ちを意識した話の構成になってきているのですが・・・『くうそうノンフィク日和』の不思議な感じの第三者視点(語りは一人称だけど,物語に対してはまったくの第三者)や,ハードボイルドっぽい文体が失われているので逆に普通の作品になってしまっているような気がします.
とりあえず,雑誌に掲載され続ける限りは,今後に期待ってことで.

プロットとしては,喫茶店の雇われ店長である主人公の視点を中心にして,平凡な女子高生だったはずが「魔女」として選ばれて異世界で闘うことになった女の子と,魔女の騎士として選ばれて現実世界で「殺人」を行うことになった男の子,2人を追う選ばれなかった男の子,の三者を描くもの.
古臭くて安直にも思えるプロットですが,物語に対しての第三者視点から語られることによって奇妙な現実感が出ているあたりが特徴でしょうか.語り口は完全な一人称なので説明的な台詞が少なく,物語を完全に理解できないあたりが逆に魅力的だと思います.

とはいえ,読み手を選ぶであろうことは必須.かくいうunepも,最初に読んだときは第一章で挫折してしまいました.その後,パンドラ読破の意味もかねて読み直したのですが,後半になるにつれて文章がよくなっていき,面白さがわかるようになった気がしています.
「書いている段階で,作者さんがどう面白くするか理解していったのかな?」という印象.

ただ,この作品を講談社BOXから単行本として発売したのは,まだまだ早すぎたのではないかな・・・という気がしますね.1260円って決して安い値段ではありませんから.
[PR]

by unep | 2009-02-15 10:24 | 読書

『マッピー』用ボーダー

<< 西尾 維新 『ネコソギラジカル... 泉 和良『エレGY』 >>